ケーススタディ金融
高速・高精度でスケーラブルなリアルタイム不正検知:年間2億3,000万ドル超の不正損失を削減
課題
ある一流のグローバル決済処理業者は、日々処理する数十億件の取引の中から、不正行為をリアルタイムで特定する必要がありました。 不正を効果的に検知するためには、1秒あたり数万件のトランザクションを、高精度かつリアルタイムで処理することが求められます。取引量と不正手口の高度化が年々進むなか、不正防止システムには、増大する取引量に対応できるよう効率性を高めると同時に、不正検知の精度も向上させることが求められます。
直面した主な課題
- 極めて高い運用要件:精度を維持しながら、1トランザクションあたり2ミリ秒未満のレイテンシで、最大1秒あたり65,000件のトランザクションを処理する必要がありました。
- モデル反復の遅さ:トレーニングサイクルが長く、新たな不正検知戦略を迅速に検証・展開することが困難でした。
- 非効率な事前計算処理:プリフィル(CPU側の前処理)によって、ユーザー状態の更新や新モデルのデプロイに遅延が発生し、運用上のオーバーヘッドやダウンタイムの原因となっていました。
- 大規模ステートストレージの制約:各カードの取引履歴は、事前計算された状態として保存し、リアルタイムでデコードする必要があります。アクティブなカードシーケンスが数十億規模に達すると、状態サイズがわずかに増加するだけでも、ペタバイト単位のストレージ増加につながり、スケーラビリティとインフラコストが深刻な制約となっていました。
ソリューション
当社はクライアントと緊密に連携し、Liquid Foundation Model(LFM)をバックボーンとしたカスタムモデルを開発しました。本モデルは、スピード、スケーラビリティ、そして高い不正検知性能を実現するよう設計されています。
- パッキングによる効率的なトレーニング:GRUのパディングを、数値的に正確なパッキング方式に置き換えることで、最大80%の無駄な計算を削減し、トレーニングの高速化を実現しました。
- カスタム埋め込みおよび推論スタック:CPU推論向けに最適化されたスタックにより、レイテンシを1ミリ秒未満に維持します。
- コンパクトな状態表現:ユーザーごとの状態サイズを最小限に抑え、10億規模の導入においても、追加のストレージ負荷が発生しない設計を実現しました。
- プライバシー重視の導入設計:クライアントのセキュリティおよびコンプライアンス要件に対応するため、完全オンプレミス/オンテナントのインフラで導入しました。
成果
被害額の大きい不正取引の検知
大規模不正のリアルタイム検知
トレーニングおよび開発の高速化
スケーラブルで効率的なインフラ
顧客の信頼と保護の強化
- 不正金額に占める割合の高い取引を的確に検知することで、年間推定2億3,000万ドルの追加不正損失の防止を実現しました。
- これにより、財務損失、チャージバック、顧客への影響を直接的に軽減しています。
- また、ドル加重精度を用いた独自指標において、従来のGRUモデルを上回る性能を達成しました。
- リアルタイム予測レイテンシは従来比で2倍以上改善されました。
- 数十億規模のカードシーケンスに対しても、シームレスなスケーラビリティを実現しています。
- トークンあたりのトレーニング時間を約1/1.8に短縮し、パッキングにより、バッチあたりのトークン数を80%増加させました。
- これにより、研究開発の反復を加速し、新たな不正対策を迅速に展開できるようになりました。
- 事前計算されたユーザー状態のサイズや、ストレージフットプリントを増加させることなく運用可能です。
- また、オンプレミス導入によるCPU最適化推論スタックにより、プライバシーコンプライアンスにも対応しています。
- 不正行為をリアルタイムで検知することで、即時の財務保護が可能となり、ユーザーにとってコストと時間のかかる復旧対応を未然に防ぎます。
- その結果、詐欺に伴うストレスが軽減され、信用状態が守られることで、決済処理業者(クライアント)に対する顧客の信頼がさらに強化されました。
